ディズニープリンセスを線で考える

ディズニープリンセスを過去作品から考えて考察していくのが主です。どっちかというと懐古厨なのかもしれせんが、どのプリンセスもやっぱり好きです。憧れはオーロラ姫です。

アナ雪は男性を否定してないよ

一ディズニーオタクとしての意見ですが、ジェンダー的な見方でアナ雪を解釈しようとしてる人をちらほら見かけます。それ自体はいいんですが、どうも捻くれてるなって気がするんですよ。

穿った男性目線では「男なんかどうせ要らないんだろ……」と。

穿った女性目線では「ほら観て! 男なんかなくても私たちは幸せなのよ!」と。


本当に憤慨してます。

「初のダブルプリンセス」として注目の的になった本作に対して変な反応を示しているのでは? と思う方々がいるので、ファンとして反論させてください。

ディズニーオタクの自分からするとアナ雪の凄さは「男を排除した」ではないんですよ。

「プリンセスが結婚を蹴った」ところなんですよ。

 男性のクリストフも活躍し、友達以上恋人未満にまで行ってたわけじゃないですか。女から見たクリストフはイケメンだと思います。内面もプリンスの中だと良い方だと思います。

ナディーンとかフリンとかハンスみたいな割とダメンズが続いた中で久しぶりにイケメンキャラが来たな……と思いました。

「男が要らない」が伝えたいことだったらこのタイミングで、マトモな男性キャラを投入しなかったはずですよ。

彼はあくまで結婚に到達しなかったってだけなんですよ。


本作の凄さはディズニーの伝統であった「プリンセスとプリンスの結婚」を選択しなかったのです。ディズニーとしては凄く珍しいけど、今の世の中って全ての男女が結婚するわけじゃないし、結婚しなかったとしてもそれは不幸せね……って言う考えを覆したかったんじゃないかなと思います。

「男性は要らない」だったらむしろハンスだけでよかったのではないでしょうか。

わざわざクリストフと言う好青年を登場させたのは、従来ならば選択されるべきプリンスキャラをアナが選ばないと言う展開を持ってこないと「結婚をゴールと考える固定観念」を壊すことができなかったんだと思うんです。


「白雪姫」から始まったディズニープリンスの童話は初期の作品だと「シンデレラ」「眠れる森の美女」などのプリンスに一目惚れをさせる、自分を選ばせると言う受動的な存在でした。

さらに「リトルマーメイド」ではむしろアリエルが王子に見初め自分から動くという能動的なプリンセス像を完成させました。

そして「美女と野獣」では二人の男に言い寄られるベルが自分の意思で野獣の優しさを見抜き、王子を選んだのです。

近年のプリンセスは王子と対話、ときには喧嘩をすることで自分の理想とする恋愛を選択できるようになりました。

しかし、アナ雪では「選択しない」ということをしました。

ディズニーオタクの自分は最初、この作品を受け入れられませんでした。長らく続いた作品が否定された気がしました。

しかし、時代が変わっていくし、そもそも「プリンセスは結婚するもの」という固定観念が間違っていたのだと気付けました。

「アナはしなかった」ただそれだけのことで他のプリンセスが結婚をして幸せになったのを本作は否定していません。

エルサやクリストフはハンスと結婚しようとするアナを揶揄するのは「たった一回会った相手」という部分に引っかかりがあるからです。

(そう考えるとリトルマーメイド以前の作品は若干揶揄されているところがありますが「魔法にかけられて」が既にやってます。ただし「魔法に~」ではプリンセスの結婚で終わり、「真実の愛」自体は肯定してます。)


本作は「美女と野獣」「魔法にかけられて」「プリンスと魔法のキス」「塔の上のラプンツェル」発表後の作品であり、「ちゃんと王子の性格を知った上で結婚しなければならない」という比較的新しいプリンセスの宿命がアナやエルサにはありました。

ハンスが失敗例なのはその新ルールから違反しているからです。

そして本作より前には「メリダとおそろしの森」という作品がありましたが、これが新しく執行されたルールで「そもそもプリンセスは結婚しなくても良いのだ」というものです。前作「メリダ」の知名度が少ないのでインパクトもなかったのかもしれませんが、結婚がないプリンセスっていたって実は良いことになったんです。

メリダではそもそもプリンスが登場しません。逆にアナ雪でクリストフがプリンス風な立場になった途端「男を当て馬にしてる」という一部捻くれた方々がいますが、ディズニーの意図は「要らない男性」ではなく、「結婚を選ばない女性」に過ぎないのです。だからクリストフにも褒美が与えられてるし、彼は仕事好きそうだしアナに好意はあるけど、劇中で結ばれなきゃいけない!という焦りがないだけじゃないのと思ってしまいます。


アナとエルサが姉妹というのは凄い絶妙な設定だと思います。「真実の愛」を結婚以外で考えたとき非常に重い感情が家族への愛なのは自然な結論だと思います。

プリンセスの平均年齢は所感ですが16~18位だと思います。アナとエルサも同じくらいでしょう。

そのくらいの女の子が「私、結婚しない! お姉ちゃんと一緒にいる!」って強い気持ち持っていてもおかしくはないし、そういう幸せだってあるってただそれだけの話なんですよね。


あと女性の中に「王子さまを待つなんて本当に馬鹿すぎると思ってたのよ! アナ雪良くやった!」みたいな意見もチラホラ見ます。

 「アナ雪良くやった!」は同意なんですが、だから過去作品否定するってそもそも「ディズニープリンセス嫌いだったんだなぁ」と、思います。個人的にそんな女性とは仲良くなれそうにないですね。


https://m.youtube.com/watch?v=CtyOC6ayKoU

このファンアートと言いますか、正直不味いです。素人っぽさというか品が悪いです。

ただエルサが他のプリンセスに文句を言ってるだけじゃないですか。

公式の「魔法でかけられて」のディスり方と比較してしまうとやはりボロが出てしまって見てられません。

これって「結婚したくてもできなかった女性が結婚したい女の子に意地悪してる」図にしか見えません。「真実の愛など無い!」って言ってるマレフィセントかアースラですよ。これは。

違うでしょう。エルサもアナも「結婚を選ばないのが己の幸せ」に帰結しただけです。しかし、他のプリンセスにとっては王子と結婚する夢を追いかけるのが幸せなんですよ。

それを「男なんて要らないのよ」なんて言ってるのみると呆れて物も言えません。自分の価値観を押し付けているだけです。

ありのままの姿になった人間はマウント取りません。安易にレリゴーしないでほしい。


ディズニー作品の根底は「夢は諦めなければきっと叶う」です。

「白雪姫」の「いつか王子さまが」

「シンデレラ」の「夢はひそかに」

「眠れる森の美女」の「いつか夢で」

など夢見るプリンセスとともに幸せに浸るのがディズニープリンセスの醍醐味です。

2期黄金期では脈々と受け継がれてきましたが徐々に「夢は叶わないかもしれないけれど、伴うように努力しよう。他の夢が見られるかもしれない」というちょっとシビアなものも見られました。

魔法にかけられて」や「プリンセスと魔法のキス」が顕著です。但し、「夢を見ること」そのものを否定していません。「魔法にかけられて」では夢を見ることを忘れたニューヨークの人間が夢や愛を取り戻していくという「ディズニーの本質」は否定せず、クラシックプリンセスをディスった実に痛快なパロディ作品です。


「王子さまだけが幸せじゃない」のはアナ雪のメッセージ通りでしたが、行き過ぎて「さあ女の子達! 王子さまなんか要らないのよ! 旦那に言ってやんなさい!」っておかしくないですか?

「結婚しなきゃいけない価値観を押し付けないで!」と言っていた層が「結婚なんてクソ!」って言う価値観を押し付けてしまってるという地獄絵図。

結婚しない女性がウエディングドレスを着て喜んでる女性に喚いてる図じゃないですか。

エヴィルクイーンですらこんなみっともない姿見せてませんよ。


43万いいねされてますが、個人的にびっくりです。歌も上手い、コスプレも上手。でも「ディズニープリンセス」への愛を感じないんです。この作品は。アナ雪のことは大好きなのかもしれませんが、旧作下げして、本作上げしているだけで本質を分かってないのです。このエルサには一生引きこもって頂きたい。



なんども言いますが、「アナ雪」は選択肢を広げてくれた作品です。私が一番言いたいのはこれです。

なんと言うか、最近のディズニーにすら少し辟易しちゃうのは「女の子らしい女の子はあざとい。男勝りな女の子こそ凄い!」という空気を感じてしまうことです。

いやいや、少し前の「男勝りな女の子ははしたない。女の子らしい女の子であれ!」と逆になっただけで進歩してないぞ!と思うんです。「女の子らしい女の子も男勝りな女の子もいるわ! 皆が幸せになるべきよ!」じゃダメなの!? これじゃあ多様性っていうより、ステレオタイプをぶっ壊したいだけじゃないか! というがっかり感がすごいんです。それは作品だけじゃなくておそらく鑑賞者側にもいて、今回のようにチラホラいた屁理屈言ってたみたいなのがそういう層だったんだと思います。

とりあえずアナ雪に関しては「結婚しませんよー」というたかが一つの選択に、「男は必要とされないんだー!」とか「そうよ! 男なんか要らないわ!」とか騒いでるのが悲しくて。結婚をしても良いししなくても良いという多様性に気づいてほしいなと思いました。


「価値観なんかいっぱいありますよ!プリンセス一人結婚しなかっただけでどうしたって言うんです? 皆落ち着いて!」ということです。